2016年08月26日
【転載 『楽譜のいらない音楽授業』_ 第4回 ♪わかり合えないと意味がない♪ 】
肺炎でドクターストップを受けた田野城は
ニューヨークレコーディングを中断し、
音楽業界から暫く退いていた時期があります。
その間、自身の経験から強く音楽教育に関心を持ち、
さまざまな垣根のない教育実践を行ってきました。
その活動が10年目に入った頃、和多田 進さんから
お声をかけていただき、和多田さん編集長の地域ポータルサイト
『北海道人』にて初めてのメルマガ連載を担当させていただきました。(2007年3月)
「好きなことを自由に語っていい」ということで始まった
『田野城寿男の「楽譜のいらない音楽授業」』。
演奏家に本格復帰を決意するまでの約1年6ヶ月続いた記事の中から
スタッフが選んだいくつかを皆さんとシェアしたいと思います。
型破りで破天荒な田野城の半生や、考え方が読者の皆さんの清涼剤になれば幸いです。
では、イントロダクションvol.4(最終話) をどうぞ。<聴き手・小笠原 淳さん>
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【イントロダクションvol.4 (最終話)
♪わかり合えないと意味がない♪ 】
ーーーバークリー在学中、実技のテストで100点満点を貰ったことがある。
「でも、実際はメタメタな演奏だった。おかしいと思って『採点間違ってます』って申し出たら、先生が真顔で『間違ってない』って言うの。
『ほかに上手な人たちがいっぱいいたでしょう』って言うと、頷いて『しかし、ヒサオが一番努力したじゃないか』って」
《最初から上手な連中は、昨日と今日とでほとんど変わってない、だがお前は違った、昨日のお前と今日のお前とは全然違う、ベストを尽くした結果だ》
「自分のベストを出すことが大事だと。音楽って、答えがひとつじゃないんですよ。
基礎を身に付けた後は、オリジナリティの確立を目指すしかない。
自分はどう思うか、自分は何者かっていうことを、自分の音で表現し続けるしかない」
人生そのものだと思った。
「恩師たちから授かったのは、技術以上に大切なものがあるってことです。
なぜ演奏するのか。突き詰めたら、『愛』なんですよ。
音楽を通じて世界中の人たちとわかり合えないと、音楽をやってる意味はない、って。
性別や年齢が違っても、人種や思想や信仰が違っても、魂は伝わる、って」
16年前、モントルー・ジャズフェスティバルのステージを踏んだ田野城さんに、プロデューサーのクインシー・ジョーンズ氏が言った。
《お前は誰にも似ていない》
小学生時代の悩みは、いつの間にか消えていた。「音楽をする人間は地域や社会に貢献できるし、貢献していくべき」と知った今、そのイズムを子供たちに、若者たちに、自分の言葉で伝えていきたいと思っている。
「やりたいことあったら、やってみたらいい。駄目なら何度でもやり直せばいいよ。世界は広い、どこにでも希望はある」
ー 『イントロダクション』終わり ー
(スタッフより)