2014年08月15日
悲しい母の声だ
スタジオからの帰り道、
NHKラジオ深夜便が好きで
よく聴いている。
僕も以前、出させていただいたことがある。
今日は相田みつを美術館館長で
みつをさんのご子息が出演されていた。
みつをさんやその家族について話されていた。
みつをさんは戦争でお兄さんを二人亡くされている…
戦争で我が子を亡くした両親の落胆ぶりはすごかった。
お父さんは、それ以来
子供達のことを全く話さなくなり、
お母さんは自分が亡くなるその時まで、
息子達の名前を呼び続けていた。
みつをさんはその姿を目の当たりにした。
みつをさんは詩人で書家。
二つの異なるエネルギーを使う芸術家。
生前彼は戦争について多くは語らなかった。
でも詩にはきちんと残していた。
僕のうろ覚えですが…紹介します。
「いかなる理屈をつけても戦争はしてはいけない」
戦死した兄の一人へ宛てて戦友から手紙が届いた。
心臓一発で亡くなったと家族は聞いていた。
それが親にとってはせめてもの救いだった。
しかし、戦友の手紙の内容は違っていた。
肺に弾があたった。
亡くなるまで2時間苦しんだと。
それを知って、母親はさらに嘆き悲しんだ。
亡くなるまで兄は戦友に向かって
子供時代の話から親兄弟の話までしたという。
そして最期に、
“戦争は人間の作った最大の罪だな”
24歳の若者が死の間際に語った言葉。
これが何を意味するのか…。
そしてもう一つ。
相田みつを美術館に訪れた小学生のこと。
“どうして人を殺してはいけないの?”
学校の先生からいかなる説明を聞いても納得できないでいた。
しかし、美術館にきてわかった。
どうしてか。
みつをの詩。(うろ覚えで失礼…)
「自分にとって一番大切なのは命だ。
だから他人であっても同じことなんだ。」
“あっ、わかった”
小学生の子供の心にストンと落ちた。
みつをの詩をさいごにきちんと紹介したい…。
「 〜ひぐらしの声〜
ああ 今年も ひぐらしが鳴き出した
ひぐらしの声は
若くして戦争で死んだ
ふたりのあんちゃんの声だ
そして二人のあんちゃんの名を
死ぬまで呼びつづけていた
悲しい母の声だ
そしてまた
二人のあんちゃんのことには
ひとこともふれず
だまって死んでいった
さびしい父の声だ
ああ今年も
ひぐらしが鳴き出した」
“戦争について語り継ぐ人がいない。
それは僕達大人の責任だ。
若い人達にぜひ知ってもらいたい…”
そう館長は語っていた。