世界共通の言語である音楽は、国や民族、宗教の違い等を越えて、人の心を豊かにしたり、幸福にする力を持っています。だから音楽をする人間は地域や社会に貢献できるし、貢献していくべきなのです。僕の言葉では、音楽は、人が人を想う「愛」だということになります。だからこそ、演奏の技術を伝える前に、そうした音楽の持つ意味や、素晴らしさを伝えていきたい。音楽をすることの延長に、自分の生き方、社会との関わり方を考える道を据えてみたいと思っています。

マンハッタンは僕を自由にさせる街、ヤニー・ホーンをうならせろ! vol.2 / 6


今回はレコーディングのため、わざわざ特別に作っていただいたシルバーソニック・ブラック・ラッカーのテナーとソプラノだけに、壊れてもらってはたいへん困るのである。ニューヨークにはこの楽器のスペアなどないからだ。


楽器は特にレコーディング中は非常にバランスがくずれやすくなるものだ。スタジオの各ブースの温度差にも敏感に反応してしまう。


レコーディングを行った「マスター・サウンド・アストリア」のエンジニア、ディビットは僕に言った「デビット・サンボーンはレコーディングの時、4~5台のサックスを持ち込んでくる。それに驚いたことにリペアマンも同行するんだ」また「録音の途中にサックスのバランス調整だけで数時間中断してしまう」とも言い、笑っていた。サンボーンは自分にとっていい音がでるまでまったく妥協しないのも素晴らしいし、またそれを認めるレコーディング・スタッフも見事だ。


僕はアメリカに着くとさっそく友人のリペアマン・ロバート・ロメオのファクトリーへこのヤニ−・ホーン(ヤナギサワ・サックスのことをニューヨ−カーはこう呼ぶ)を持ち込んだ。彼は僕がニューヨークにいる時、いつでもサックスの調整をしてくれるいわばホーム・ドクターのような存在だ。


優れたリペアマンがいてこそ安心してプレイできる。そんな彼のもとへはソニー・ロリンズ、ジョー・ヘンダーソン、ボブ・バ−グ等、一流アーティストたちが修理や調整のためにやって来る。彼はリペアマンとして、また音楽を愛する同業者として、優れたアーティストだと僕は思っている。


そんな彼が僕のケースを開いて、このシルバー・ソニック・ブラック・ボディのヤニ−・ホーンを見た時、開口いちばん叫んだ。「ビューティフル・ホーン!」


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