Lure [ルア] 発行/札幌芸術の森 Vol.56 spring 2000 文:谷口 雅春/写真:渋谷 文廣
まず、キミは何のために演奏するんだ?と問いかけたい。
僕は米国で音楽教育を受けた人間で、そのシステムが優れていると考えています。アメリカでは、音楽はまずスピリチュアルなもので、それを表現するにあたっては、高い技術があったほうがいい、というふうに考えます。
その逆は、絶対にない。
人は、何のために音楽をするのか。コンクールで優勝したり、人と争って技術を高めるためですか。
もちろん、ちがいます。
音楽は、国や民族の違いなどを越えて、人を豊かにしたり、幸福にすることができます。
だから音楽をする人間は、地域や社会に貢献できるし、貢献していくべきなのです。僕の言葉では、音楽は、人が人を想う「愛」だ、ということになります。
音楽は、いま現在に熱く脈打っていて、すぐれてインターナショナルな世界です。だからその中に身を置くことは、異文化や言語、人種、性といった、現在の世界がリアルに直面するさまざまな問題や可能性に、素手でふれることにもなるのです。
スクールでは、演奏の技術を教える前に、そうした音楽の持つ意味や、素晴らしさを伝えていきたい。音楽をすることの延長に、自分の生き方を考える道を据えてみたい。
ですから、ぜひご両親もレッスンに立ち会ってほしいのです。
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