「BRUTUS」(ブルータス)1992年2月1日号/マガジンハウス
君はコルトレーンじゃないんだから、ヒサオのチェンジをつくり出さなければならない。
陽気でパワフルで無国籍な変わり者・・・とでも呼べばいいのだろうか。
テナーサックス奏者・田野城寿男、33歳。なにしろ、ごくありきたりの大学受験浪人1年目のとき、ある日突然といった感じでボストンにあるバークリ−音楽大学留学を決意し、無手勝流で夢を実現してしまった男である。
断わっておくが、音楽的にはまったくのノンキャリアで、である。でも、彼の無手勝流はそれだけに留まらなかった。渡米前に心に決めていた3人の音楽家の懐に飛び込むことに成功し、そのレッスンのなかからミュージシャンとしてのバックボーンをしっかりと身につけてしまったのだ。
そのバックボーンがいかに優秀でコンテンポラリーなものだったかは、昨年の夏、クインシー・ジョーンズに招待されて『モントルー・ジャズ・フェスティバル』に出演したことでもわかるだろう。 では一体、彼のバックボーンとはどういったものなのか。そのキーワードが「リィディアン・クロマティック・コンセプト」なのだ。
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