ちょうど僕の大好きなミルトン・ナシメント(ブラジル音楽を世界的に有名にした大御所)が歌っていた。その時、突然ブーイングが出たんです、露骨に。信じられなかった。出来が良くなかったみたい。それ聞いて、風呂の中でブルッと震えちゃいましてね(笑)。僕の出番は1週間後。自分にこう言い聞かせました。とにかく名前じゃないんだ、ベストを尽くすだけだと。
編成ですか?僕一人です。本当は5人編成で行くはずだった。が、いろんな事情から直前に僕一人のセッティングに変更されたんです。バンドはどうする?というのでステージにMacを持ち込む案も出たけど、ヨーロッパでMacは故障が多いというのでボツ。じゃあ、とスタジオに入ってレコードを作った。曲のつなぎを全部決めてワン・ストーリー全部をレコードに入れた。それをDATに落とす。1台だと故障したときに困るから2台持ち込み、本番では予備の1台も作動させておく。
だからステージには一人で上がりました。1対数千人の勝負ですよ。過酷でしょ(笑)。食うか食われるかです。もともと僕はシングルネームでやって来たから、生きるか死ぬかみたいな覚悟はあったつもり。が、モントルーのプレッシャーは想像以上でしたね。プロボクサーの気持ちってあんなんじゃないかな。頼れるものは自分しかない、という。
【Tano-ism(タノイズム) 記事一覧】