2016年09月27日
【転載 『楽譜のいらない音楽授業』_ 第15回 ♪音の華_ vol.1♪】
肺炎でドクターストップを受けた田野城は
ニューヨークレコーディングを中断し、
音楽業界から暫く退いていた時期があります。
その間、自身の経験から強く音楽教育に関心を持ち、
さまざまな垣根のない教育実践を行ってきました。
その活動が10年目に入った頃、和多田 進さんから
お声をかけていただき、和多田さん編集長の地域ポータルサイト
『北海道人』にて初めてのメルマガ連載を担当させていただきました。(2007年3月)
「好きなことを自由に語っていい」ということで始まった
『 田野城寿男の「楽譜のいらない音楽授業」 』。
演奏家に本格復帰を決意するまでの約1年6ヶ月続いた記事の中から
スタッフが選んだいくつかを皆さんとシェアしたいと思います。
型破りで破天荒な田野城の半生や、考え方が
読者の皆さんの清涼剤になれば幸いです。
では、音の華_ vol.1 をどうぞ。
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【 ♪音の華 ♪ vol.1 】
マイルス・デイビス――。
ジャズファンならずともその名を知る
今は亡きジャズ・トランペット奏者。
彼は1981年6月27日、
ボストンのクラブKIXで長い沈黙を破りします。
当時、大学生だった私は、この日、
伝説のトランペッターを初めて目の当りにしました。
渡米してからジャズ、クラッシック、ロック等
数多くのライブを観てきましたが、
今から考えてもこのライブだけはまったく別物でした。
黒人たちでごった返した会場には、
かつて植民地時代の奴隷貿易でカリブ海地域や北米へ強制連行された
アフリカ人の信仰であり宗教であったブードウ教の説教が、
あたかもこれから始まるかのような空気が漂っていたからです。
もちろんこの夜のマイルスの演奏の凄さは言うまでもありません。
緊張感が張りつめた集会?
に参加した私は全身鳥肌がたち、
ライブが終わるころにはまるで
トランス状態に陥ってしまったかのような感覚でした。
あのような強烈な印象は知識だけでは
とうてい得ることのできないものです。
まさしく「本物」 に接したときに感じる
“幸福感” を実感できた瞬間と言えますし、
大げさではなく、
私、田野城の一部を形成してしまった出来事だと言えるでしょう。
ー 続く ー
(スタッフより)