2016年09月10日
【転載 『楽譜のいらない音楽授業』_ 第10回 ♪ 大嫌いな歯医者 ♪ vol.2】
肺炎でドクターストップを受けた田野城は
ニューヨークレコーディングを中断し、
音楽業界から暫く退いていた時期があります。
その間、自身の経験から強く音楽教育に関心を持ち、
さまざまな垣根のない教育実践を行ってきました。
その活動が10年目に入った頃、和多田 進さんから
お声をかけていただき、和多田さん編集長の地域ポータルサイト
『北海道人』にて初めてのメルマガ連載を担当させていただきました。(2007年3月)
「好きなことを自由に語っていい」ということで始まった
『 田野城寿男の「楽譜のいらない音楽授業」』。
演奏家に本格復帰を決意するまでの約1年6ヶ月続いた記事の中から
スタッフが選んだいくつかを皆さんとシェアしたいと思います。
型破りで破天荒な田野城の半生や、考え方が読者の皆さんの清涼剤になれば幸いです。
では、大嫌いな歯医者vol.2 をどうぞ。
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画像引用元:http://shoottokyo.com/blog/newbury-street (画像はイメージです)
【 ♪ 大嫌いな歯医者 ♪ vol.2 】
そこはまるで、美術館の一室のようだった。
大きめの椅子がポツンと置いてあり、
壁には宇宙の写真や絵画が飾ってあり、
そして、リラックスできる綺麗なBGMが流れていた。
そこには、医療器具が一つもおいてなかった。
私がソファー(診療台)に座っても、
一切、医療器具等はでてこなかった。
“これでもか!!”
と目の前一杯に医療器具や照明が
置いてあるのが私の歯医者のイメージ。
それを見るだけで、一歩引き下がってしまう程、
歯医者=“恐怖” のイメージがあった。
ところが、偶然にも入ったそこには、
綺麗な部屋に素敵な音楽や絵画、
そして座り易いソファーがあるだけ。
彼は緊張している私を見て、
「僕はハーバード大学のデンティストで教鞭を取っています。
だから、安心して任せてください」
と言って、ニコッと笑った。
私は、それでも信じる事ができず
「本当にここは歯医者なのか?
外国人の私を変な診療方法で騙そうとしているのではないか?
診療室らしくないこの部屋で一体彼は、何をし始めるのだろう?」
とソファーに横たわりながらも、眼球をフルに使って、
彼の仕草や辺りをしっかり見続けた。
ー 続く ー
(スタッフより)