2010年10月30日
体制の中の反逆児
「1894年、アドルフ・サックスは
失意のうちにひっそりと世を去るが…」
僕がサックス吹いてみたいと思ったきっかけは、
高校時代聴いた
エルビン・ジョーンズ『ライト・ハウス』でした。
エルビンといえば…
ジョ・コルトレーン。
ジョン・コルトレーンが
マイルス・デイビスグループを
脱退した後に結成した
カルテットのドラマーが
エルビン・ジョーンズでした。
そのエルビンがドラムス、
ジーン・パーラのベースに
2人のサックス奏者
スティーブ・グロスマンと
デイブ・リーブマンが絡み付く。
往年のコルトレーンを彷彿する
彼らの演奏に、僕は胸躍った記憶があります。
サックスの音色に魅了された瞬間でした!
最近、飛行機や新幹線などで移動している時
『サキソフォン物語-悪魔の角笛からジャズの花形へ-』(青土社発行)
という本を読み始めました。
サックスの誕生の秘話から宗教、民族を超えて
世界中で愛され続けるサックスの魅力について
インタビュー形式で書かれています。
体制(当時の音楽業界)からの避難や嫌がらせ
度重なる闘争にアドルフが耐えられなかったら
この世にサックスと呼ばれる楽器が
登場しなかったかもしれない…
そう思うと、
サキソフォンを手に取るだけで
感慨無量になります。
この本の著者マイケル・シーゲル氏にインタビューを受けた
サキソフォンの名手ロンデクスが興味深いコメントをしています。
「『セックスの響きだね』
ジャン・マリー・ロンデクスは
私の空いたグラスを香りの良い
コルビエールで満たしながらきっぱりという…(中略)
『わたしにとってサキソフォンとは、
その音の出所というのはセックスに近い。
行為じゃなくて。おおもとの勢いとか力がね。
クラッシックの場合、サキソフォン奏者の誤りは
そこに気づいていないことだ。
何かをしているがフィー、フィー、フィー』
ロンデクスは羽ばたく鳥のように手を振った。
繁殖しない鳥はただ高い声で歌うだけだ。」
クラシックのサキソフォンの伝道師ロンデクス。
彼は音程ではなく、一番大切にしければならない
音そのものの力、奥深さについて語っている。